ヒデの頭がナイフリッジの向こうに見えた!長いこと頂上で待っていた私は、彼が無事登ってきてくれたことに安堵するとともに、自身が登頂したときより感動している自分に気づいた。
私にとってヒマラヤとは何なのか、一時迷いが出てきた頃、もう一度自分の気持ちを見つめ直したくて、カナダの登山スクールに入学した。3ヶ月間ほど山の基礎を学び直した後、スクールで同期だったヒデを誘い、アラスカのデナリへ出かけたのだった。初めて自分でオーガナイズした登山は、隊長として至らなかった部分と、隊員が登頂できることの喜びを教えてくれた。
何が大切なのか、どうしたら後悔しないのかを、いつも自分に問いかけていたい。

デナリは、ネイティブアメリカンの言葉で"高きもの"という意味で、6,194mの北米大陸で一番高い山の名前である。日本ではマッキンリーとして有名だが、1980年、マッキンリー国立公園は、太古からの名前を尊重して正式にデナリ国立公園に改められた。国立公園を管理しているレンジャーステーションは、入山する者から1人150$を集め、道中のパトロールやルート整備、無料の救急医療テントの運営やトイレの設置などに利用している。トイレがない場所にテントを張ったとしても、汚物はすべて、分解されるビニール袋に入れてトイレまで持ち運ぶことが義務づけられている。
写真は白夜の夕暮れ。このあと闇は訪れず、再び山々は朝陽に輝き出す。